「人」が支え、「手」がつなぐ、福部の砂丘らっきょう/鳥取砂丘・岡野農園 岡野 巧さん

福部の砂丘らっきょう


福部町らっきょう収穫

鳥取県の北東、海沿いにある「鳥取市福部町」は、見渡す限りのらっきょう畑が自慢です。5月下旬の福部町にはカタカタカタカタカタ・・トラクターの音が広大ならっきょう畑に響きます。畑の向こうには青い海、どこまでも続くらっきょうの葉の緑、あちこちに積まれたオレンジ色のコンテナ。


福部町岡野農園

らっきょうの匂いがふわっと風に乗ってやってくるこの景色は、鳥取の宝とも言えそうな美しさです。鳥取県は全国1位を誇るらっきょうの産地ですが、鳥取砂丘のらっきょうにはどんな特徴があるのでしょう。野菜作りの要は土壌と言われるように、畑の砂が要なのです。


鳥取砂丘
岡野農園の砂丘らっきょう

畑の砂はキメが細かく、水はけが良いため、らっきょうの実の層が薄くなり、シャキシャキとした歯ごたえが生まれます。また、土で育ったらっきょうに比べ、色が白くスッと細身で上品な姿も自慢です。毎年5月20日頃にらっきょうの収穫が解禁され、6月下旬あたりまで収穫作業が続きます。岡野農園の1日の収穫量はなんと、コンテナ180杯分。オレンジ色のコンテナに岡野農園の「お」の文字が光ります。


最高の仕事道具は、らっきょう生産に関わるすべての人の「手」


岡野農園らっきょう収穫中

「とりあえず見てごらん。」鳥取砂丘・岡野農園の岡野巧さんの畑で、早速収穫作業を見せていただくことになりました。トラクターの後ろにコンテナが5つ積まれ、準備OK!トラクターが動き出した途端に砂の中のらっきょうが跳ね上がり、ポンポンとおもしろいようにコンテナに入っていきます。


福部町のらっきょう

よく見てみると、畑は緑色の葉っぱがすべて刈り取られています。つまり、収穫前にまずは葉の刈り取り作業があるということ。そして二人の従業員さんがコンテナの後ろについて進み、らっきょうがバランスよくコンテナに入るように手を入れたり、足元に掘り残しがあれば手で拾い上げてコンテナへ。決してトラクター任せの収穫ではないのです。


岡野農園らっきょう
岡野農園らっきょう収穫コンテナ

収穫後、夕方にはコンテナが次々とトラックに乗せられ、根と茎を一粒ずつ切る「切り子さん」のところへ向かいます。福部町内など近場はもちろん、佐治町など離れたエリアへも運び、掘り立てのらっきょうと入れ替えに前日預けたらっきょうを受け取るという毎日。そして驚くことに、らっきょうは植え付けから収穫まで10ヶ月もの間砂の中にいるのです。植え付けは種用のらっきょうをひと玉ずつ田植えのように手で埋めていくのだそう。植え付けから収穫・出荷まで、らっきょう生産に関わる人の数に驚かされ、そして何よりも重要な仕事道具が「手」であることを実感します。


岡野農園三代目の誇り


らっきょう農家の子は収穫の手伝いをして育ったという方が多い中、岡野さんは「全然手伝わなかったですねえ。」と笑っておっしゃいます。「若い頃は当然継ぐ気もなかったから、親には少しずつ規模を縮小していって。」と話していたというから驚きます。そんな岡野さんに転機が訪れたのは20代半ば。お母様が怪我をされ、仕事を休職して生まれて初めてらっきょうの収穫をした年のことです。その時に感じた「あ、イヤじゃないかも・・」という感覚。そして、その年の収量、収支などの記録を目にしたときの「これ、頑張ったら儲かるんじゃないか!?」というひらめきから、三代目として岡野農園を継ぐことに。


岡野農園岡野さん

25年たった今では朝夕に組合の仕事もあるという多忙な日々を送りながら、「最近やっと人に任せることを覚えたかな。自分が健康でないと長く続けられないなって思うようになったんで。」とおっしゃいます。後継者問題は当然らっきょう農家全体の問題でもあり、200軒近くあった農家が今や70軒くらいになっているそう。「えらい(大変な)とこばっか見せてたら、そりゃやりたくなくなるよね。こうやったら儲かる!とか、希望を持てるようなことも伝えていかないとね。」岡野農園の繁忙期は10年通い続ける従業員さんたちに支えられ、さらに今年は20年ぶりに戻ってこられた方もいらっしゃいます。まだまだ人の手を借りなければ成り立たないらっきょう栽培、岡野さんのお人柄こそが、岡野農園のらっきょう生産の原点なのです。


岡野農園の仲間たち
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