西尾園さんの「家族の絆の深さ」と「代々受け継がれてきた技術力」を生かした、らっきょう作り/西尾園 西尾祥幸さん

見渡す限り広がる、らっきょう畑


福部町の西尾園

「見渡す限り、一面らっきょう畑なのはこの辺りぐらいです。」そう遠くを見ながら話してくれたのは、らっきょう農家である西尾園の西尾祥幸さん。


鳥取砂丘の砂の美術館の脇の道に入ると、「らっきょう畑」と標識に書いてあります。その道を少し走ると、緑の細い葉がぴょんとはねたらっきょう畑が見渡す限り広がっていました。見えるのは、青々としたらっきょう畑と、道と、遠くにうっすら見える海。そして砂丘で人気者のラクダもいます。


西尾園西尾さん

農家さんにお会いすると、ここは〇〇の畑で、隣は〇〇で、と何種類かの野菜を同時に育てている方が多く、これだけ一面に同じ野菜が育てられているという光景をみる経験はありませんでした。それだけ、砂丘で作物は育てることは難しく、その厳しい環境でも強く育つのは、らっきょうくらいなのだと西尾さんは教えてくれました。


元々、砂丘の土地は、戦後に軍から払い下げられた土地でした。「ここで何を作ったら育つだろう」と考え、当時は桃などを育てて見たそうです。今もその名残で桃を作っている農家さんもいらっしゃるそうですが、らっきょうがこの砂地には合う、とらっきょう作りが盛んになっていきました。そして、この鳥取市福部町のらっきょうは「砂丘らっきょう」と呼ばれるようになり、この地の特産品となっていきました。


鳥取砂丘で作られたらっきょうの特徴は


西尾園のらっきょう

鳥取のらっきょうの特徴は、真っ白なその色と、シャキッとした食感。これはここでないと作れないと西尾さんは言います。その色と食感を作り出しているのが、きめ細やかな砂地のおかげなのです。


ですが、この砂地はとてもやっかいで、栄養が少なく、水通しが良すぎるとのこと。10キロ肥料を入れても7キロ流れていってしまうそうです。しかし、流れるからといって肥料や水をあげないわけにはいかず、ほどよくいれてあげ、雑草を抜いてあげ、砂が風でかかってしまったら埋もれた部分を出してあげて、と収穫までいろいろな手入れを重ねます。


福部町西尾さんのらっきょう畑
福部町西尾さんのらっきょう畑

らっきょうは、植え付けの時からとても大変な野菜で、7月25日頃から8月20日頃までと一番暑い時期に、中腰になって一つ一つ手で植えていきます。西尾さんのところは13、4人ほど植え付けの時に手伝ってくれる人が来てくれるそうですが、3日あたりで続けられる人、続けられない人と分かれるといいます。


10月から11月上旬ころまで、らっきょうの花が咲きます。みなさん、らっきょうの花は何色かご存知ですか?紫色なんです。一面の紫色の花は圧巻で、観光客の方が見にこられるほどにきれいなのだそうです。その時期にまた訪れたくなりました。


そうしているあいだにも、人件費や時間をかけて雑草を抜く日々が続きます。この作業をしないと肥料が雑草に持っていかれて、大きくならなかったり味が落ちたりします。手間暇をかけ、丁寧に育てられたらっきょうは5月25日〜6月25日ころ10ヶ月の時間を経て、ついに収穫・出荷されます。


西尾園根付きらっきょう
砂丘らっきょう収穫

収穫されるらっきょうはなんとコンテナ1200杯ほど。収穫したらっきょうを葉の部分、根の部分を切る作業があるのですが、その作業は40人もの人の力を借りて出荷作業を行います。次の植え付け作業は7月25日ころ、ということで出荷から植え付けまで1ヶ月ほどしかなく、らっきょう農家さんにとって5月から8月の3ヶ月間は目が回るほどの忙しさなのです。


西尾園さんの強み


「会社員の方が楽でしたよ」と話す西尾さん。

西尾さんは、以前は会社員として働いていましたが、ある日、1人で切り盛りしていたお父さんの体調が悪くなり、戻るか、西尾園がなくなるかという選択を迫られました。「いずれは農業に戻る」という気持ちも心の中にありましたが、いろいろと考えた結果、会社を辞め、2002年4月から就農することを決めます。半年後、西尾さんが会社を辞め実家に戻ったことを知った弟さんも就農することとなり、家族揃って新しい体制になった西尾園を20年近く、盛り上げてきました。


西尾園西尾さん

農業を継ぐ際に、先代が亡くなられてから就農される方もいる中で、ご両親と一緒に仕事することができることで、技術の伝承の面での有難さや、やりやすさがあったと西尾さんはおっしゃいます。また、家族経営ならではの密なコミュニケーションにより、円滑に仕事を進めることができるなど、強みを生かしたらっきょう作りをされています。


今後について伺うと、「うちだけ、というより他の農家さんとらっきょう作りはこんなにやりがいがある!と地域で盛り上げていきたいという気持ちがあります」と笑顔でおっしゃっていました。鳥取砂丘で作られたものでしか味わえない、シャキシャキのらっきょう。その味は何代にもわたって、多くの人の手がかけられ、今も大事に守られて来ています。

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